

「ひざの水を抜くと癖になるので、絶対に抜かないで!」と言われる患者さんが、いまだに多くいらっしゃるので驚きます。 昔は関節がはれ上がり水(関節液)がたまった場合、水を抜いてとりあえず楽にするしか方法がなく、水がたまる原因である関節軟骨の破壊や炎症に対する治療が全くできていませんでした。そのため、いつまでたっても水は減らず、抜いても癖にはなりませんが、水がたまっていたのです。
よく聞かれる質問にお答えしましょう。
①なぜ水がたまるのでしょうか?
関節は関節包という袋で包まれており、関節包の内側を覆っている滑膜からは常に関節液が分泌、吸収されています。しかし、炎症が起きると、このバランスが崩れて関節に水がたまるのです。
②どうして炎症が起きるのでしょうか?
外傷や加齢により関節軟骨が壊れると、壊れた関節軟骨がこすれ合って摩擦が大きくなり、炎症が起きるのです。
③たまった水はどうなるのでしょうか?
関節の炎症がなくなり、関節液の分泌と吸収のバランスが正常に戻れば、水は自然になくなります。水を抜いても絶対に癖にはなりません。
次回は、どんなときに水を抜くのか、水をためないためには、どうすればいいのかをお話しします。
前回、ひざの水は癖にならないことを説明しましたが、では①どんなときに水を抜くのか②どうすれば水がたまらなくなるのかについてお話しします。
まず①について
(1)水がたまり過ぎて、ひざの屈伸に支障があるとき《たまり過ぎると関節が膨れて周囲の靱帯(じんたい)が緩み、安定性がなくなります》
(2)診断を確かめるとき
《水がたまるときには変形性関節症、リウマチ、化膿性関節炎などのほか、けがをして血液がたまることもあり、診断のために水を抜き、検査をします》
(3)治療のため関節内に関節軟骨の保護薬を注射するとき《水が多いと、せっかくの薬が薄められて効果がなくなるので、水を抜いてから注射します》
次に②について
前回述べたように、炎症が起きるために水がたまるわけですから、炎症の原因を取り除けばいいのです。
具体的に述べますと—
(1)関節軟骨の変性・破壊を回復させる《関節軟骨の保護薬を関節内に注射する。保湿、理学療法などで血行を改善させる》
(2)大腿(たい)骨と下腿骨のずれを矯正する《足に矯正靴底を付ける。歩き方を整える》
(3)ひざに安定性をつける《大腿四頭筋(太ももの筋肉)の訓練を行って筋力を強くする》
〈注意〉歩くことは必ずしも訓練にはなりません。筋力のない不安定なひざで無理に歩くと、かえって関節を痛めます。筋力トレーニングで脚力をつけ、少しずつ歩くようにしましょう。
正しい訓練と治療で、必ずひざの痛みから解放されます。
腰痛で来院される患者さんは、非常に多く、これに関する情報もちまたにあふれています。こういった情報に左右されないためにも、専門医の診察を受け、自分の腰痛の原因や特徴を知ることが大切になると思われます。特に高齢者の場合、痛み方もさまざまで、丁寧な診察が必要になります。
比較的年齢の高い患者さんの腰痛の特徴として
①エックス線像で腰椎(ようつい)にさまざまな変形が認められ、病変部の範囲も広く診断が難しい
②我慢できなくなってから診察に来るケースが多く、 既に慢性化しており、治療が長引く
③他の病気との合併症が多い
など若い世代の腰痛と違い、しかも原因の病気は多様で、他の病気と間違うことも多いようです。
例えば、痛みが腰に限られる代表は、筋肉・靱帯(じんたい)・骨などが老化で変性した変形性腰椎症ですが、骨粗しょう症による腰椎の圧迫骨折や脊椎(せきつい)分離症、脊椎すべり症も同様の痛みを伴うことがあります。
腰も脚も痛いのは、椎間板(ついかんばん)ヘルニアのほか、特に高齢者に特徴的な腰部脊椎管狭窄(きょうさく)症があります。これは腰椎の変形や脊椎すべり症で脊椎管が狭くなると、管内を通る神経が圧迫されて腰や脚へ痛みが走るからです。このほかに脚だけが痛い場合もあり、椎間板ヘルニアでときどき見掛けるタイプです。しかし、このタイプは糖尿病性神経炎や脚の血管が閉塞(へいそく)して起きる痛みと間違われやすいようです。
このように、腰や下肢の痛みやしびれがあるときは、前出のような病気が疑われますが、その他脊髄(せきずい)の腫瘍(しゅよう)なども同様の症状が出現します。また、同じ病名でも進行状況、圧迫の位置などさまざまな要素で痛みの種類が変わるため、専門医で詳しく診てもらうことが大事です。
肩から腕にかけての痛みを訴えて来られる患者さんは、比較的多いのですが、特に思い当たるけがや無理したわけでもないのに、肩が重だるかったり、特に夜間や朝方に痛みが強く、肩を上げることもできない方がおられます。この症状は40歳以上の方に多く、若い方でも肩を使うスポーツや仕事をされている例に多いようです。一般に四十肩とか五十肩といわれていますが、正しくは「肩関節周囲炎」といいます。
肩関節は全身の関節の中で最も動く範囲が広い関節ですから、周囲組織に過度のけん引力が加わったり、若くても使い過ぎたり、年齢とともに腱板(けんばん=肩を動かす筋肉の板状の集まり)が擦り切れたりして関節を包む袋に炎症が起こりやすくなり痛みが出現します。
いつか治ると思って治療もせずに放置していると、痛みが軽減するとともに、肩が動かなくなります。これを「凍結肩」といいます。痛みが軽くなったから良くなったのではなく、関節周囲の組織と癒着して動かせなくなってしまったもので、むしろ悪化した状態といえます。
なお、肩の痛みは頚椎(けいつい)の病気で起こる場合も多く、まれに内臓の病気からくることもあるため、診断・治療には相当の経験が必要となり、整形外科専門医にご相談下さい。
○次回は治療について
肩の疼痛(とうつう)には起こって約1週間以内の「急性期」と、それ以後の「慢性期」があり、それぞれ治療法が異なります。
①急性期
症状が出て2—3日はとても痛みますので、まず痛みの原因の炎症を鎮めます。即効性があるのは、消炎のための関節内注射、これでまず辛い夜間痛から救われます。もちろん肩を安静にして、湿布や消炎薬を服用することも大切です。しかし痛みのため3日以上肩を動かせないと関節内で癒着が起こり、肩が上がらなくなります。この時期に適切なリハビリテーション治療を行えば癒着も防げ、早期に回復しますが、不幸にして癒着が起これば慢性的な痛みに悩まされることになります。
②慢性期
ここでも注射とリハビリが治療の中心となりますが、この注射は消炎を目的とはせず、癒着を防ぎ関節の動きを改善するヒアルロン酸ナトリウム液を関節内に注入します。そして癒着をはがし肩の動きを元に戻すためのリハビリ訓練が必要となります。この時、自己判断でマッサージをしたり、肩をグルグルまわしたりしていると腱板(けんばん、前号参照)を傷つけ悪化しますので、正しい運動法を専門医に指導してもらうことが重要なポイントとなります。
ひじを直角に曲げた状態で、両腕を脇の下につけ、手先を外側に回旋して、痛みが起きたり、動きが悪かったりすれば関節内の癒着があると考えるべきです。
五十肩は夜間痛・運動痛が強く辛いものです。早期の注射と適切なリハビリ訓練により、初めて痛みや運動障害から解放されるのです。
「母さん、お肩をたたきましょう タントン、タントン、タントントン」 と歌にもあるように、昔から肩凝りがあると、肩たたき・マッサージがなされてきました。 しかし、いくらマッサージをしてもすぐに凝りがぶり返したり、痛みまで伴うようなケースがよく見受けられます。このような場合、必ず何らかの原因や疾患が潜んでいるはすです。肩凝りを起こす病気には、内科的には癌(がん)を含めた肺疾患、心臓、大動脈、胃腸、肝臓胆のう疾患が有名ですし、眼科疾患でも肩凝りを起こします。しかし何といってもその75—80%は頚椎(けいつい)の病変であるといわれています。
首を回すと首の後ろから肩・肩甲骨に痛みが走ったり、腕にしびれが生じたりする場合、まず頚椎に何らかの病変があるはずです。このときいくらマッサージをしても、その時は治ったように感じるかもしれませんが、すぐに元に戻るはずです。頚椎の病変によって、脊髄(せきずい)や神経を圧迫したため神経がはれ上がり、その神経の走行に沿って凝りや痛みが出現しているからです。従って頚椎の病気を治さずに、単に表面にある筋肉をほぐしたところで症状が消失するわけがないのです。
たかが肩凝りと思わず、一度専門医に診てもらい、適切な治療やアドバイスを受けてみてはいかがでしょうか。
Aさん(48歳)は朝、顔を洗おうとして前かがみになった時、突然、腰部に激痛が走り、そのまま動けなくなってしまいました。これが欧米では「魔女の一撃」と恐れられているぎっくり腰です。
腰に無理な力が加わったり、長時間一定の姿勢をとり続けて次の動作に移ろうとしたときなどに起きます。エックス線上に異常はなく、腰だけに痛みがあるのが特徴で、専門的には「突発性腰痛症」と呼ばれています。腰の筋肉が肉離れを起こしたり、腰椎の関節部にずれが生じたり、関節の袋が挟み込まれたりして起こることが多いようです。
Aさんも診察すると、背骨は1本の棒、背中の筋肉はコチコチ、立ち座りも満足にできない状態でしたが、注射で無事に動けるようになりました。
いずれにしろ、2—3日間は、とにかく安静を保っていれば痛みは軽減します。ただし再発を繰り返すと椎間板ヘルニアになることもあるので、日ごろから筋肉を鍛え、急に物を持ち上げたりしないようにご注意を!
「ぎっくり腰になった」と自己診断して来院される患者さんがたくさんいますが、丁寧に診察し、エックス線撮影をした結果、意外に多くの人に異常が認められ、実際は椎間板ヘルニアや骨粗しょう症による腰椎の圧迫骨折などである場合も見受けられます。
素人診断は危険です。必ず専門医の診察を受けるようにしましょう。
Yさん(60歳・男性)は、半年前から歩いている最中に思い当たる理由もなく右脚に痛みを感じていたところ、最近では10分間歩くだけで脚のしびれに耐え切れずしゃがみ込む状態になってきました。
腰部脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)であることが分かりました。背骨には脊柱管という脳から続いている脊髄(せきずい)が通っている管があり、腰の部分の脊髄からは、座骨神経を代表するいくつかの脊髄神経が腰部—臀部(でんぶ)—下肢へと枝分かれして、それぞれの受け持ち区域に行き渡り、運動や知覚などに関する情報をコントロールしているのです。
脊柱管狭窄症は、そうした重要な役割を持つ神経の通り道が狭められ、神経への栄養の供給も減って、神経が十分な機能を果たせなくなった状態をいうのです。
では、なぜ脊柱管が狭められるのでしょうか。
このほか、レントゲンを撮らなければ分からないのですが、脊柱管が先天的に狭い人や、腰椎が前方にずれるすべり症、脊柱管の後方の椎弓部分の骨が欠ける分離症などがある人は狭窄症を発症しやすいといわれています。
次回は治療について述べます。
歩いていると脚に痛みとしびれが出て、歩きづらくなる症状(間欠跛行=はこう=と言います)があれば腰部脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)が疑われます。しかし、最初に同様の症状を示す閉塞性動脈硬化症や糖尿病との違いを見極めること(鑑別)が大事です。
いったん腰部脊柱管狭窄症の診断がつけば、初期治療として、神経の炎症を取り、脊髄(せきずい)・神経の血行を改善する消炎鎮痛剤と血流改善薬を内服し、日常生活でも背中を反らす姿勢を避けるよう注意することです。これで効果がなければ、痛みを伝えている神経に注射し、痛みの伝達を遮断(ブロック)する神経ブロック療法を行います。薬物治療で効果のない患者さんの半分くらいがこれで治ります。しかし、これらの治療で効果がなく、両脚のしびれが強く肛門周辺の灼熱感や排尿・排便障害が表れたら、3カ月から半年以内に脊髄や神経の圧迫を除去するための手術が必要となります。
この疾患では、腰椎に負担をかける体操や矯正・マッサージの類は、かえって症状を悪化させる危険が大です。治療のタイミングが遅れると、たとえ手術をしても症状が残る確率が高くなるため、早めに必ず整形外科専門医に診てもらわなければなりません。
最近目が覚めたら手のひらや指がしびれたりしていませんか?
首や肩が悪くて手にしびれが出ることはよく知られていることですが、手関節が原因で手にしびれが出ることは、案外知られておりません。これは「手根管症候群」といって手掌の真ん中を通る正中神経が靱帯(じんたい)で圧迫されたり、炎症を起こし手根管の中の圧が高まると、親指・人さし指・中指や薬指の中指側でしびれや痛みを感じるようになります。症状が進むと親指の付け根にある筋肉がやせてきて、ボタンがかけにくくなったり、物がうまくつかめなくなったりすることもありますので、注意が必要です。
この病気のしびれは夜間や明け方に多く、日中は自転車に乗る、編み物をする、電車やバスのつり革につかまるなどの動作でしびれが強くなります。また、男性1に対して女性6の割合で、圧倒的に女性に多いということが特徴です。これは、もともと男性に比較して女性の手根管が狭いことや、一日中パソコンを使用する職場をはじめ、育児でおんぶや抱っこを繰り返したり、家事や掃除で手を使い過ぎて発症するケースが目立ちます。また妊娠や閉経時のホルモンバランスの変化で炎症が起こりやすくなる要因も重なっているようです。
治療方法は症状の軽度な場合は消炎鎮痛剤などの薬の内服、湿布処置やレーザーなどの温熱療法などで効果がありますが、症状の重い場合は神経管内へのブロック注射や手術が必要となることがあります。
治療のタイミングが遅れると、たとえ手術をしても症状が残る可能性がありますので、心当たりがあればまずは早めに必ず整形外科専門医に見てもらうことをお勧めします。
外反母趾(ぼし)とは、足の親指(母趾)の付け根が内側に突出し、親指が小指側に倒れた状態をいいます。ただし、親指は正常な足でも5—15度は曲がっています。一般に外反母趾では曲がる角度が15—20度は軽症、20度より大きくなると要注意といわれています。そうして親指の付け根が内側に飛び出し、ひどい場合は関節が脱臼して突出し、激しく痛む場合もあります。ひどくなると関節炎になったり、この部位が靴の中でこすられて皮膚が炎症を起こし化膿(かのう)したりすることもあります。
これまで外反母趾というと、指にばかり目がいっていましたが、実は外反母趾は極端なことをいうと足全体の変形が問題なのです。外反母趾の人は、はだしで立ったときに足首を後ろから見るとかかとの骨が外側に傾いています。これは、足の内側を持ち上げる力が弱くなって、偏平(へんぺい)足になっているからです。この原因を生みやすいのが先の細いハイヒールです。親指の先が外側に押しやられ指の付け根が横に広がった上に、足趾(そくし)を反らす状態になるため土踏まずが押し付けられ、結局土踏まずがなくなり横幅の広い偏平足に変形が進み(開帳足)、さらに開帳足から外反母趾へと進んでいきます。この一連の流れをどの段階で食い止め、いかにして足の形を正常に戻すのかが重要なのです。
前回、外反母趾(ぼし)は指だけの問題ではなく、実は足全体の変形が原因ということをお話ししました。ですから、外反母趾を治療するためにはまず、足の変形の矯正が必要です。
その実際の治療は、第1に自分の足に合った靴を選ぶことです。普段履きには、かかとが広く安定していて土踏まずがしっかりとある靴を選ぶのが重要です。サイズは大き過ぎず、すべての足趾(そくし)が無理なく動かせる余裕のある物がお勧めです。パンプスの場合、極端にくりの大きいものは歩行用には適しません。ヒールの高さは3㎝くらいで、特に歩行量の多いときは足の甲で留めるひも締めタイプがいいでしょう。また、特別なとき以外はハイヒールをあまり履かないことも重要です。
第2に、靴の中敷きを合わせて偏平足や開帳足を修正してあげることが重要です。母趾と2番目の足趾の間に外反母趾用の挿入ゴムをはめたり、装具を使って変形を矯正したりする場合もありますが、この扁平足を治さず矯正しても効果はありません。
第3は、リハビリ(足指の運動訓練など)で足の筋肉を強化し、痛みなどの障害を除去します。ただし、脱臼などの程度がひどい場合、手術が必要になることもあります。
外反母趾でお困りの方はまず一度、整形外科専門医に相談してみましょう。
靴はもともと足を保護するアイテムです。購入する際は時間をかけて自分に合う物をじっくり選びましょう。しかし、女性にとっておしゃれは大事! 機能一辺倒では味気ないですから、TPOに合わせて上手に靴を使い分けましょう。
巻き爪(づめ・つめ)という言葉を聞いたことがある方は多いかもしれませんが、あなたは大丈夫ですか? 実は、男女問わず、この巻き爪で真剣に悩んでいる方が増えています。
主に、爪に負担のかかりやすい足の親指が巻き爪になることが多いのですが、場合によってはほかの指も巻き爪になることがあります。見た目の問題だからといって侮ってはいけません。巻き爪が進行すると、指の肉に爪がどんどん食い込み、激しい痛みを起こし、さらに巻き込まれた皮膚が化膿(かのう)して、歩くことさえできなくなる人もいます。また、巻き爪のために足をかばって歩くと、首やひざ、腰へと負担がかかってしまい、ねんざやひざ痛、腰痛の原因になることもあります。
では、その巻き爪の原因について、主なものを挙げてみましょう。
①合っていない靴。ヒールの高い靴、先のとがった靴は、指先に体重が集中し爪を圧迫して巻き爪になってしまいます。プカプカし過ぎる靴も、靴の中で足が移動することによって指先に負担をかけるのでよくありません。
②深爪。爪が肉に食い込むことを防ぐために、爪を深い所まで切ってしまいたくなりますが、これは逆効果です。一度深爪をすると、爪回りの皮膚が盛り上がり、爪の成長を邪魔する上に、爪は皮膚に食い込むように伸びてきて徐々に巻き爪が進行していきます。
③足への打撃。足の爪をぶつけると、爪の側面や肉の部分に炎症を起こし、盛り上がってしまうと両端から爪を圧迫して巻き爪になります。例えば、足の上に重い物を落としてしまったり、サッカー、ジョギング、テニスなどのスポーツで巻き爪になる可能性があります。
④最後に体質です。爪が薄く柔らかい方は巻き爪になりやすいようです。
次回は予防と最新の治療方についてお話しします。
膝(ひざ)の痛い患者さんに「歩いていいのでしょうか?」「毎日散歩していますがよろしいでしょうか?」とよく尋ねられます。
一般に膝の痛みは膝の関節軟骨がすり減り、関節内に炎症が起こって症状が表れます。この関節軟骨は絶えず体重による圧力が加わるため、年齢とともに少しずつすり減っていくだけでなく、過度の運動や労働でもその損傷が進みます。しかし、逆に関節に全く圧力が加わらないと軟骨が軟弱になり、かえって破壊が進むといわれています。つまり体重を全部かけて歩くのは、過度の圧力を加えることになり、全く歩かないのでは軟骨を軟弱化させることになります。
実際には自転車やプールでの水中歩行は軟骨に適度な圧力が加わりますし、それが無理ならクッションの利いた靴を履いての適度な散歩を勧めます。そのとき、内反膝(O脚)の方は、靴の中敷を工夫することで、歩行時に傷んだ内側の軟骨にかかる圧を軽減できるのでお勧めです。
年齢とともに軟骨がすり減っていくのはある程度仕方のないことですが、あきらめてはいけません。関節軟骨を保護・修復させるヒアルロン酸ナトリウムの関節内注射と体重の管理、室内での筋力トレーニングで関節軟骨への負担を軽減すれば、散歩や適度なスポーツも可能となります。
適切な診断と早期の治療が肝心ですので、心当たりのある方は整形外科専門医の受診をお勧めします。
スポーツや行楽に最高の季節になってきましたが、それすなわち足をねんざする人が多くなる季節でもあります。足をひねった時激痛が走ったものの、その後何とか歩けるからと適当に湿布で済ませ、2—3週間たっても痛みや腫れが引かないため来院されるケースをよく見掛けます。レントゲン撮影やひねりを加えた特殊なレントゲン撮影をしてみると、骨折していたり、靱帯(じんたい)が切れていたり、関節軟骨が壊れていたりする場合がほとんどのようです。
単にねんざという表現で簡単に片付けて適切な固定がなされていなかったために、いざ来院した時には既に日がたっており、治りが悪く治癒期間も長くなってしまうことがしばしば見られます。
一般的に足をひねった翌日以降に歩いて痛みが響いたり、腫脹(しゅちょう)が強く出血を伴っていたりする場合、まず骨折や靱帯が切れていると考えられますので、早急に固定を行わねばならず、場合によっては手術が必要なこともあります。
どんなけがや病気でも初期治療が一番大切です。まずはRICE(ライス)療法を行い、決して安易にねんざと自己診断するのではなく、必ず専門医に受診し適切な治療を受けるようにしてください。
テーピングによる治療は皮膚に行うため十分な固定が行われず20分ほどで効力が失われますので、受傷直後の治療にはお勧めできません。
仕事やスポーツをした後に肘(ひじ)が痛くなったことはないですか?
それは「上腕骨外上顆炎(じょうわんこつがいじょうかえん)」という手首・指を伸ばす筋肉や手首をひねる筋肉を使い過ぎることによって腱(けん)や骨膜が炎症を起こす疾患で、特にテニス選手に起こりやすいことから「テニス肘」とも呼ばれています。この疾患は、日常よく見受けられますが、治療のタイミングが遅れるとなかなか厄介で、多くの患者さんはいつか治るだろうと思われ数カ月間放置して受診されることが多く、しばしば治療に苦労します。症状は運動時や作業時の肘の外側の痛みです。特に肘を伸ばした状態で物を持つときに痛みを訴えます。
その治療方法は…
第一に安静ですが、日常生活でタオルを絞ったり、お湯をくみ上げたりする動作だけでもかなりの負担となることから、治療上必要な安静がなかなか保てないのが現状です。そこで、炎症を取り除くための注射が非常に効果的ですが、内服の消炎剤、湿布剤の併用もより治癒力を増します。最近ではレーザー治療も効果があるといわれています。また、手首にテーピングを行い動きにくくしたり、炎症部の負担を軽くするサポーターを着用したりします。さらに筋肉の柔軟性を回復させるストレッチングや再発防止のために痛みが軽減した段階での適切な筋力強化運動が非常に重要となってきます。
とにかく、慢性化させないことが重要ですので、心当たりのある方は早めの専門医受診をお勧めします。
年齢とともに骨のカルシウムが減少していく骨粗しょう症は、従来はカルシウム摂取不足が最も重要な原因と考えられていましたが、最近の研究では運動不足がより大きな影響を及ぼしていることが分かりました。骨粗しょう症の発症の鍵となる最大骨量(20—30歳代の骨量)は思春期の運動量に左右されているのです。しかし、単に運動が良いからといってがむしゃらに運動するのではなく、個々人に合った運動内容が大切となります。これにはまず、個々人の骨塩濃度(骨量)を測定し、骨粗しょう症の程度を把握した上で、その他の疾患(心臓病、高血圧などの内科的疾患以外に、ひざや腰が悪いなどの整形外科疾患も含む)の状態を十分考慮した専門医による運動処方がなされることが必要です。
特に高齢者について言えば、心肺機能が急激な負荷に耐えられないことや四肢関節が既に年齢による変形状態になっていることから、有酸素運動が勧められます。具体的には短距離走を何回も行ったりするのではなく、運動中に十分呼吸ができ酸素摂取が容易な、歩行、水泳、自転車、体操などの持久力を養う運動が良く、またゲートボールなどのレクリエーションスポーツも有効です。1日20—30分で、週3—5日くらいが適当でしょう。
せっかく運動によって増加した骨量は運動をやめると元の状態に戻るといわれています。骨量の測定はもちろん、運動療法が効果的に行われているか、専門医による定期的な評価を受けることが非常に大切です。
事務職をされているSさん(38歳)は、最近コンピューターを使うと手指の関節に痛みが走り、赤く腫脹(しゅちょう)してきていることに気付き、リウマチではないかと心配し来院されました。
中指と小指の第1関節が太く変形し強い炎症があるため、触ると強い痛みがありました。関節を侵す病気はリウマチを含めたくさんあるため、なかなか診断がつきにくいのですが、まず血液検査によって現在の炎症や免疫異常の有無と程度を調べます。また、関節のエックス線撮影や関節液の検査などによって、関節炎の進行具合を調べ、診断をより正確にします。検査の結果、Sさんは変形性関節症の一種である「ヘーバーデン関節炎」であることが判明し、消炎剤を服用することで症状は消失しました。
しかし、慢性関節リウマチも30—50歳代の女性に多い病気です。この年代の女性は家事や子育てに多忙な人が多く、受診が遅れがちです。治療が遅れれば、関節の破壊が進み、生活に支障が生じる恐れがありますから、特に「朝の関節の痛み・こわばり」「手足の指の関節やひざ・肩の痛み」などがある場合、「五十肩」などと素人判断されずに、なるべく早く受診するようにしてください。
熱中症とは、暑い環境下で生じる障害の総称で、熱失神、熱疲労、熱けいれん、熱射病などに分けられます。この中で最も重いのが熱射病で、死亡事故につながります。 かつて熱射病による死亡事故は、軍隊、炭鉱、製鉄所などの労働現場で問題になっていましたが、現在ではスポーツやレジャーなどにより身近な所で多くなっているので注意が必要です。
夏は発汗などで体内の水分が足りなくなることで血液が濃縮されてドロドロになって血液の流れが悪くなり、また、体内の水分が不足すると老廃物の排出もしづらくなって疲れもたまりやすくなります。
そこで、この時季はいつも以上に水分補給を心掛けることが必要で、外で汗をかいた後はもちろん、お風呂の前後や夜寝る前と起き抜けに水分補給することが大切です。また、オフィスなどの室内でも冷房や除湿で室内が乾燥して知らず知らずのうちに体の水分が奪われていることがありますので注意が必要です。ただし、水分補給が大事だからといって、一気に水をがぶ飲みするのは逆効果。胃酸を薄めて胃の働きを悪くし、かえって体調不良を起こしかねません。一度にコップ1杯ずつくらいの水分補給が効果的です。
また、冷たいものばかり取っていると腸の働きを悪くして、おなかを下したりすることもありますので、どうしても冷たいものを飲みたい方はときどき温かいお茶などを飲むように心掛けましょう。一方で、水分だからといって甘いものばかり飲んでいると血糖値が上がったままで食欲を感じなくなって夏バテになったり、メタボになったりすることも。
暑い夏だからこそ気を付けたい水分補給。自分に合った取り方を考えて、夏バテ知らずで元気に夏を乗り切りましょう。
腰痛で来院される患者さんは非常に多く、これに関する情報もちまたにあふれています。こういった情報に左右されないためにも、専門医の診察を受け自分の腰痛の原因や特徴を知ることが大切になると思われます。
特に高齢者の場合、痛み方もさまざまで、丁寧な診察が必要になります。
高齢者の腰痛の特徴として
①エックス線像で腰椎(ようつい)にさまざまな変形が認められ、病変部の範囲も広く診断が難しい
②我慢できなくなってから診察に来るケースが多く、既に慢性化しており治療が長引く
③他の病気との合併症が多い
など若い世代との腰痛と違い、しかも原因の病気は多様で、他の病気と間違うことも多いようです。
例えば、痛みが腰に限られる代表は筋肉・靱帯(じんたい)・骨などが老化で変性した変形性腰椎症ですが、骨粗しょう症や脊椎(せきつい)分離症、脊椎すべり症も同様の痛みを伴うことがあります。腰も脚も痛いのは椎間板(ついかんばん)ヘルニアのほか、特に高齢者に特徴的な腰部脊椎管狭窄(きょうさく)症があります。これは腰椎の変形や脊椎すべり症で脊椎管が狭くなると、管内を通る神経が圧迫されて腰や脚への痛みが走るからです。このほか脚だけが痛い場合もあり、椎間板ヘルニアでときどき見掛けるタイプです。しかし、このタイプは糖尿病性神経炎や脚の血管が閉塞して起きる痛みと間違われやすいようです。
このように、腰や下肢に痛みやしびれがあるときは前出のような病気が疑われますが、同じ病名でも進行状況、圧迫の位置などさまざまな要素で痛みの種類が変わるため、専門医で詳しく診てもらうことが大事です。
巻き爪(づめ・つめ)の予防法として一番重要なことは、適切な靴を履くことです。小さ過ぎるものは論外ですが、大き過ぎても歩行時に足の親指が動き過ぎて靴と当たり、結果として巻き爪になることがあります。次に大事なことは深爪厳禁! 爪の先端が1㎜程度残るくらいに四角く切るスクエアカットがお勧めです。この2点を守ることで大部分の巻き爪の悪化を予防できるはずです。
治療法については手術療法と矯正治療があります。
手術は局所麻酔後、湾曲した爪の端を切り取ってしまう方法が主流ですが、爪の幅が狭くなり、術後の痛みや約2—3週間お風呂に入れないなどの日常生活の制限があり、時に再発、爪変形が見られます。
そんな中、今注目されているのが超弾性ワイヤによる矯正治療です。爪の両端に穴を開けて超弾性ワイヤを通すだけなので10分程度で装着可能。装着時よりほぼ無痛で、当日からお風呂も入ることができ、日常生活上の制限もほとんどありません。ただし、少しずつ矯正するので4—6週間ごとにワイヤの入れ替えが必要で、爪の変形の度合いによっては完治するまで3—6カ月程度時間がかかることがあります。非常に良い方法でほとんどの巻き爪に対応可能ですが、巻き爪の状態によっては手術を必要とする場合がありますので詳しくは矯正治療を行っている当院医師にお尋ねください。
一般的に巻き爪は再発することも珍しくありません。しかし、適切な靴に履き替えたり、爪の切り方を変えたりすることで再発の予防が可能ですのでぜひお試しください。
ほんのちょっとの段差でつまずいたり、階段や坂道で転んでしまったりした経験はありませんか? 歩行中にバランスを崩してよろけてしまったり、お風呂場で滑ってしまったりした経験はありませんか?
年齢を重ねるに従って筋力が衰え、バランス能力や歩行能力が低下し、このような転倒事故が増えてきます。高齢者の転倒はそのまま骨折につながることが多く、その骨折により長期の入院や安静が必要になって、横になっている期間が長くなると足腰の筋力が弱くなり、そのまま寝たきりになったり、認知症になったりすることが多く見受けられます。この転倒しやすい人たちには、体格指数(BMI)が大きい、肥満傾向、総コレステロール値が高い、10m全力歩行が遅い、40㎝の踏み台昇降ができない等の特徴があるといわれています。また、一番転倒の多い時間帯は午前10時から11時ごろで、この時間帯から活動量が多くなるためのようです。
さて、転倒を予防し健やかな日常生活を送るためには何が必要なのでしょうか? それはストレッチ体操で関節の動きを良くすることと、筋力トレーニングで筋力・バランス能力をアップすることです。しかし、1人でのリハビリはなかなか長続きしません。
そこで、当院ではリハビリ治療の一環としてみんなが楽しく一緒に頑張れるリハビリプログラムを用意しました。1人でするよりみんなと一緒に頑張る方がきっと楽しく続けられるはず。興味のある方は、ぜひ当院スタッフにお尋ねください。
夏の疲れが残るこの時季、お昼寝って大変気持ち良いものです。でも、起きた時に首が痛くなったことはありませんか?
朝起きた時に首が痛くて回らない、いわゆる「寝違え」はだれもが経験することですが、「2—3日たつと治るだろう」と軽くみられる場合が少なくありません。しかし、単なる寝違えとはいっても、厳密に言うと頚椎(けいつい)から肩甲骨に橋渡ししている筋肉組織に炎症が起きた状態になっているのです。症状は軽くなっても、全治には意外と時間がかかり、時には3週間—数カ月も痛みが続くこともあります。
原因は一様ではなく、長時間寒い所に居て首をこわばらせていたり、不自然な格好を続けたり、慣れない作業をした時などに起こりやすいようです。治療はいたって簡単で、痛む所に局所麻酔剤と消炎剤を注射すれば、すぐに痛みは治まります。患者さんによっては、精神安定剤を使ってリラックスさせると良くなる場合もあります。
しかし、首を動かすと肩や腕に痛みが走ったり、痛む部位が一定せず、日一日と痛みが強くなったりするような場合、頚椎の椎間板(ついかんばん)ヘルニアや変形頚椎症などが原因の病気であることが多いです。
なるべく整形外科で診てもらうことをお勧めします。
「M子さん(54歳)は、右のお尻から太ももにかけて、重だるさを感じてマッサージなどをされていましたが、ある日、階段を降りていると、突然右太もも辺りに強い痛みを感じ歩けなくなりました。杖を借りてやっとの思いで来院されレントゲン撮影を行うと、本来は丸い形をした大腿骨の先端部(骨頭)がイビツになり、これを受ける骨盤のくぼみからはみだし、股関節軟骨が破壊され、骨も一部に壊死状態が確認されました。これは乳児期に「巻きおしめ」や間違った抱き方をされて起こる股関節の発育不足が原因で、程度が軽い場合は、幼年~青少時にかけて普通にスポーツもでき、異常を感じないまま過ごし、知らず知らずのうちに関節軟骨が傷んだ上に、中高年になり筋力低下や体重増加により、初めて症状が現れる事が多いようです。
流行のサプリメントも残念ながら傷んでしまった関節軟膏を修復・再生させることは難しく、基本的には痛みを和らげ、傷んだ関節をさらに悪化させない薬物治療、リハビリテーション治療、装具療法などの「保存治療」を行うことが重要です。
正しい保存療法をしておくことで、手術をしなくてすむばかりか、将来たとえ手術が必要になることがあっても、必ず良い手術結果を得ることができるからです。
前回に続いて、正しい診断により変形性股関節症であった場合、進行程度により異なりますが、治療方は保存的治療と手術治療になります。残念ながら傷んでしまった関節軟骨を修復・再生させることは現状では難しいのですが、正しい保存療法によって痛みが消失し、関節の悪化を防止でき、手術をしないで済むばかりか、たとえ将来、手術が必要になっても、手術適齢期まで待たせれば、必ずより良い手術結果を得る事が出来るからです。
保存療法として①薬物療法:痛みや筋肉の緊張を和らげ、関節の破壊進行を防ぐ薬や、骨を丈夫にする骨粗鬆症薬を投与、②理学療法:患部の腫瘍やこわばりを緩和させるために、温熱・電気治療を行う、③装具療法:股関節に負担を軽減し、歩行移動を楽にできるようコルセットや杖などを処方、④リハビリテーション治療:筋肉のコリをほぐして痛みを楽にし、股関節を保護するための筋力強化を図る、⑤日常生活指導:これがとても大事!移動手段や避けたい行動、水中運動など家庭でもできるトレーニング方法の指導です。
しかし、改善されなかったり破壊程度が進行した場合手術をお勧めしています。手術には練達したテクニックを必要とするため、安心できる手術医への紹介も重要なポイントとなります。
70歳代のAさん(女性)は、脳出血を患い、右半身に経度の麻痺が残っていましたが、当院通所リハビリを利用し、杖を使用して歩ける状態まで改善していました。
ところがある日、自宅で転倒されて足の指を」骨折。1か月間の入院生活が必要となりました。退院後はすぐに通所リハビリを再開。骨折部は順調に良くなっており、痛みもありませんでしたが、歩行が不安定なため屋内の移動も車椅子を使用されていました。入院生活によって硬くなっていた体をしっかり動かし、弱ってしまった脚の筋力トレーニングを行っていくことで、杖を使って十分に歩ける状態まで改善がみられました。しかし、生活場面では相変わらずの車椅子生活。ご主人もついつい手を貸してしまうとのこと。「転倒への恐怖心」が生活場面での動きを妨げていました。この恐怖心を減らし、歩くことに対する自信をつけてもらう必要がありました。ご自宅を訪問し、居室からトイレへの移動などAさんの生活場面を想定した歩行訓練を行いました。またご主人に対しては、必要な介護とそうでない介護を具体的に説明し「できることはAさん自身にやってもらう」という方針を確認しました。現在。屋内は杖を使用して一人で歩けるようになり、外にも自信を持って出て行けるようにと屋外えでの歩行練習に励んでおられます。
K(男性)さんは、奥様と二人暮らしをしながら地域の役員を引き受け、88歳まで元気に過ごされていました。しかし、以前から膝の痛み(変形性膝関節症)を治療することなく放置していたため、徐々に悪化。最近では、認知症の症状まで見られるようになっていました。当然のことながら、外出の機会が減り、自宅で閉じこもっての生活が続いていました。
当院の通所リハビリテーションには、Kさんの外出や運動の機会を増やす目的で担当のケアマネージャーさんより相談がありました。
通所リハビリテーションでは、Kさんの筋力や関節状態に合わせた負荷でエアロバイクや筋力トレーニングを行いました。自宅で行える筋力トレーニングや膝関節の負担が少ない動作方法をKさんや奥さんにも伝え、実践して頂きました。1~2か月経過すると、痛みが軽減、他利用者様やスタッフとのコミュニケーションにも笑顔で応じて下さるようになりました。通所リハビリテーションでは、身体作りや生活動作だけでなく、楽しく過ごせる環境作りも大切です。
当院では認知症ケア専門士、認知症介護実務者研修を修了した理学療法士が勤務しており、認知症の方の生活質を高める工夫にも力を注いでいます。
食品調理会社で長時間ゴム長靴を履いて立ち放しの作業を行っているFさんは、ここしばらく足の裏の不快感が続いていましたが、数日前から、歩くのも辛いほど痛み出し、来院されました。
レントゲン撮影をしたところ、踵の骨の足の裏(足底)部分にツノが突き出たような骨棘が認められ、圧迫すると強い痛みがありました。
これは足底筋膜といって、踵骨の底部から5本の足指のそれぞれに伸びて、本来のアーチ状になっている足底を支えるための弾力性のあるワイヤーに、足のアーチが扁平になるほどの強い引っぱる力が加わったり、合ってない靴で長時間立ったり走ったりすると、筋膜の付着部である踵骨部で断裂や炎症が起きるのです。
治療は、まず個々人の足に合わせて、アーチを保護するような靴や中敷を用いることです。炎症を取るための薬も効果があります。しかし患部をマッサージすると悪化するので注意してください。
健康にいい靴と称して、却って足に負担をかけている靴もよくみかけます。足に障害をもつ場合、そのような靴が適しているのか。専門医に相談してみるべきでしょう。
80歳男性Yさんは、友人と外出をしたり自転車に乗って買い物に出かけたりと活動的な生活を送られていましたが、自転車とぶつかり転倒し大腿骨頸部骨折を受傷したため人工骨頭置換術を受けられました。
術後は、脱臼の危険性があるため股関節を過度に曲げたり内股の姿勢に制限が必要となります。入院中の活動量低下による筋力低下と術後股関節の動きが制限されるために、退院後も自宅内での移動や着替え、入浴などの動作が困難となっていました。そこで、ベッドの周囲の移動や入浴動作などの日常生活動作練習と自室やベッド上で行える筋力トレーニングを中心とした訪問リハビリステーションを開始しました。その結果3か月後には身の回りの動作や杖での歩行が安定してきたため、次のステップとして骨折前のような活動性の高い生活が送れることを目標に通所リハビリテーションへ移行し、リハビリを継続しました。手術後約1年半が経過した現在では、自信を持って外出できるようになり、友人と電車に乗って出かける事を楽しめる状態にまで回復されています。
当院では介護保険を利用した訪問リハビリステーションおよび通所リハビリステーションを実施しています。利用者様の身体状況や生活環境を総合的に評価し、その時期に必要なリハビリテーションを切れ間なく継続的に提供してまいります。